長い間お菓子の仕事をしていると、時に驚くような出来事に出会うことがあります。
想像もしなかったような出来事がありました。
おちちやのクッキーを気に入って、何度も購入して下さるあるお客さまのお話です。
今年最初にクッキー缶を募集したときも、ご注文をいただきました。
1月半ばにはお渡しできる予定だったのですがわたしが体調を崩してしまい、遅くなることをお伝えしました。
「急がなくて大丈夫ですよ。
ゆっくり治して下さいね」
というお返事でした。
結局1週間寝込んでしまい、その後ゆっくりと仕事を再開しました。
2週間後、準備ができましたと送った連絡になかなか既読がつかず、電話もつながらず。
普段はすぐにお返事を下さる方なので、数日経っても連絡が取れない状態が続いたとき、ご病気を患っているとおっしゃっていたことを思い出して不安がよぎりました。
教えていただいていたご主人の連絡先に電話をかけながら、どうかいいお返事が返って来ますようにと祈るような思いでした。

あの直後に容態が急変し、彼女はお亡くなりになられたのでした。
最後まで、おちちやのクッキーが届くのを待っていたとのお話でした。
電話を切ったあとも事実を受け止めきれず、やりきれない痛みでいっぱいでした。
思っても見なかったのです。
2週間前にわたしの体調を気遣ってくれた人が、その直後に亡くなるなんて。
しかもおちちやのクッキーを食べたいと待ち続けていたなんて。
もしかしたら、人生最後の願いだったかもしれない。
何も知らなかったことが、悔やまれてなりませんでした。
それを知っていれば、どんなことをしてでも作って届けたのに!!!
彼女の手に渡すことのできなかったクッキー。
もちろんお届けするつもりでしたが、すぐに欲しいとご主人がご希望下さり。
ありったけの想いを込めて作りました。
そしてお花と共に届けに行きました。
綺麗にお化粧され、まるで眠っているかのように見える彼女に対面しました。
手を合わせ、クッキー缶が間に合わなかったことのお詫びと、これまでの感謝を心の中でお伝えしました。
ご主人がクッキー缶とお花を祭壇に供えて下さり、やっと届いたと喜んでくれました。
時間を巻き戻すことはできないし、だからこそ目の前の一瞬一瞬がかけがえないのだと改めて思います。
彼女に出会えたこと、いただいた愛に感謝しています。
ご冥福を心よりお祈りいたします。