波乗り

ひと仕事終えて、御宿海岸へ。
8月も終わりの平日、午後遅くのビーチに少し前までのにぎやかさはもう無かった。
夏が過ぎようとしているのを感じる。
海水は夏の初めのころと違い、やさしい温度で心地良い。
台風の影響で波は高く、砂や海藻が混ざった水は濁っている。

昨日、この海で海水浴客が数人流されたようだ。
無事に救出されて良かったけれど、もちろん今日だって危険が無いわけじゃない。
人も少なくライフセーバーもいない海では、いつも以上に自分の身の安全は自分自身の責任だ。
少しの緊張感を持って海に入る。

わたしが海に入るのは、波に乗るのが楽しいからだ。
足が充分につく深さを確認しながら、できるだけいい波に乗れる場所を探す。
大きな波の砕ける寸前の一番高く盛り上がったところで乗れたときの、全身がふわっと持ち上げられる感じが大好きだ。
けれど自分のところに届く前に波が砕けたときは、思い切り頭から白い波をかぶることになる。
それをかぶらないように上手くジャンプしてかわせることもあるし、失敗して海中に引き摺り込まれることもある。
鼻から口から容赦なく海水を吸い込み、波にもまれ、溺れそうになったこともある。
そんなときの海の力は凄まじく、抗いようもなく、自然の姿に驚嘆する。
怖さも感じる。
あまりにも大きなものの前では何の力も無いのだと感じさせられる。

そして、それを味わってすら波乗りはやっぱり楽しい。
ただただ子どものように、単純に、無邪気に波に向かい続ける。
一人で海に話しかけ、声を上げて笑う。
空には今日も龍雲。
こんなときはいつも、龍が来てくれる気がする。
龍を呼んでみる。
手を振ってみる。

なんということのない遊びの中に、満ち足りた時間。
何も欠けるものが無い。
自分への信頼と愛。
豊かさへの感謝。
しあわせだなぁって噛み締める。

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